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小説「味噌汁の味」(20)

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( 19 へ戻る)  相変わらず、デカイ家だ。  俺の実家である。東京に住んでいると、田舎の家は本当にデカイ、とつくづく思う。無理もない。俺は六人兄弟の長男として生まれたのだから。  オヤジは教員だった。戦争にも召集されたらしいが、戦地に赴くまでもなく敗戦を迎えたという。戦争が終わってからは教員に復職し、地元の高校の校長まで務めた人物である。この家を建てたのは、確か俺が高校生ぐらいの頃だった、と思う。  記憶は、本当に曖昧だ。それに意外と両親のことを知らないんだ、と改めて感じる。特にオヤジのことは、よくわからない。  玄関には、チャイムすらない。田舎の家は、そういうもんである。 「えっ、鍵かけてないの」俺が引き戸を開けると、浩輔が驚いて言う。 「田舎ってのは、そういうもんだ」俺はちょっと得意げに言ってみる。「隣近所は顔見知りだし、違う土地の人間なんて滅多に来ないからな」 「はーい」奥の方から、声がする。俺のオフクロだ。  オフクロが姿を現す。三十年近く会っていないと、さすがにその年老いた姿が目に痛い。 「……裕輔かね」オフクロは、わなわなと震えながら俺に声をかける。「……やっとかめだなも」 「……ただいま」俺も、これ以上の言葉がない。「紹介するよ。妻の聡美、息子の浩輔、それに娘の恵美子だ」 「そうかね、そうかね」オフクロは土間に下りて、俺と家族の顔を見比べる。「こんな遠くまで、よういりゃあした」 「お世話になります」聡美は深々と頭を下げる。「ほら、あんたたちも」 「お世話になります」 「まあまあ、よくできた子たちだわ。さ、さ、上がって上がって」 「オヤジは、いるの」 「ちょっと近くまで散歩に行くって、出かけなさったわ。パチンコでないの」オフクロはいたずらっぽく笑いながら言う。「照れてりゃあすんだわ、あの人も」  オフクロは俺たちを、客間に通してくれた。懐かしい匂いのする部屋だった。兄弟でケンカをし、物を壊して怒られていたのが、この部屋だったことを思い出した。 「これ、見たってちょうだいよ」オフクロが、部屋の柱を指して言う。「この傷、裕輔の成長記録だわ。こんなに小さかったんだわね」 「へえ、オヤジもこんな小さかったんだ」浩輔と恵美子は、柱を食い入るように見て、俺の姿と見比べている。 「当たり前じゃないか」俺はやけに恥ずかしくなって、正座してしまう。「父さんにだって、子...

【私の音楽ライブラリー/第六回】DEEP PURPLE/Fireball

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ゆでたまごのすけでございます。 今回紹介するのは「火の玉」 でございます。 直訳ロックの重鎮・王様も、 さすがにこの曲は コピーをされておられない ようでして。。 1. Fireball 2. No No No 3. Strange Kind of Woman 4. Anyone's Daughter 5. Mule 6. Fools 7. No One Came 黄金期と呼ばれる第二期の、 「In Rock」に続く2枚目のアルバムでございます。 このアルバムの中で、王様が直訳ロックでコピーされているのは、 3曲目だけでございます。直訳の題名は「変わった感じの女」。 王様の直訳による歌詞を聞くと、ああなんてセクシーな曲だろう、 と感動してしまうのでございます。 しかし、やはりこのアルバムの目玉は1曲目だと思うのでございます。 王様は、この1曲目はコピーされておられない。 なぜか。 私は、何となく理由がわかるのでございます。 かつて、何かの番組でDEEP PURPLEのライブ映像が 流されていた時のことでございました。 アンコールで、どうやら「Fireball」を演奏する様子なのでございます。 何だか、ローディたちが、慌ただしくステージ上を動いておりまして。 今の時代なら、楽器やセットの転換は暗転してやるものだと思いますが、 この映像では、普通にIan GillanがMCをしゃべりながら、 Ian Paiceがドラムセットの後ろに鎮座増しながら、 普通にドラムセットをいじくりまわされておったのでございます。 そして、気がつくとドラムセットは、2バスになっておりました。 2バスというのは、足で踏むバスドラムが2つあるドラムセット、 ということでございます。 つまり、両足でバスドラムをどこどこどこどこ、と踏む、と。 なるほど、「Fireball」を演奏する時は、2バスにするのか、と。 王様は、コピーをする際に2バスのドラムで再現するのが 難しいと思って、コピーをやめたのではないか、と。 勝手に私は類推しておるのでございます。 そうそう、高校時代のバンド仲間の間では、 RainbowのドラムだったCozy Powellや、 Van HalenのAlex Van Halenの真似をしようという時、 「2バスどこどこでいこうぜ」 なんて表現をしていた記憶がございます。 ...

私に「気づき」を与えてくれた・魔法使いサリーちゃん

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ゆでたまごのすけでございます。 人間、カッコつけるのをやめると、 とたんに見えてくるものが ございます。 私にとって、そんなきっかけを 与えてくれたのが、 魔法使いサリーちゃんで ございました。 今から15年ほども前でございましょうか。 確か1992年の秋に行った、個性派組という当時やっていた劇団での舞台でのことでした。 タイトルを「MONEY」という作品でございました。 バブル末期の、まだその余韻が残って浮かれ続けている時代でございました。 ジュリアナ東京、なんて懐かしいですが、 そんなディスコ(当時はまだクラブではなかったかと)に日夜現れる、 ボディコン(!)・ワンレンのおねーちゃんを主人公にした作品でございまして。 金の力で男をはべらす、実は田舎者、という設定だったのでございます。 そんな彼女に、天の声が響いてくるわけでございます。 そんなことやっとると、バチがあたるぞー。 その声に、当てられるものなら当ててみなさいよー!なんておねーちゃんは 毒づくのでございます。 そうすると、おねーちゃんは魔法をかけられて小さくなってゴキブリの世界に 行ってしまうという、なんともシュールな展開なのでございます。 その、場面転換のためだけに登場するのが、私扮する魔法使いサリーちゃん だったわけでございます。 なんでサリーちゃん?とは聞かないで下さいませ。 ただ、場面転換のために出てくるなら意味不明でいいじゃん、 ぐらいの感覚だったかと思われます。 その展開の設定は、私が考えたのではなく、劇団主宰だったA氏でございました。 以前、このブログでもご紹介した、中学からの同級生でございます。 この脚本を私が書き、A氏が演出を手がけている中で、 突然、彼が思いついたように言ってきたのでございます。 ゆでたまごのすけ、サリーちゃんになってよ。 私は正直、なんで?と思いました。 その場面転換のために、俺がサリーちゃんとして登場する理由って何?と。 いいからさ、やってよ。絶対おもしろいから。 そうか、絶対おもしろいのか。じゃあやってみるか。 私も単純なヤツでございます。 そこから、私は役づくりを始めたんでございます。 当時、コンビニにブリーチ剤などを置いているような 時代ではございませんでした。 なので、私は美容室に行き、 パツキンにして下さい。それと、おばさんパーマをかけて下さい。 ってな...

【私の音楽ライブラリー/第五回】DEEP PURPLE/Stormbringer(嵐の使者)

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ゆでたまごのすけでございます。 70年代から80年代にかけての 洋楽につけられた邦題が、 本来の意味とはずいぶんと かけ離れてるのが多い、 なんて話を以前に書きましたが、 今回紹介するアルバムは、 そのまんま!という感じの 邦題になっているのでございます。 「Stormbringer」。嵐の使者でございます。 1. Stormbringer 2. Love Don't Mean a Thing 3. Holy Man 4. Hold On 5. Lady Double Dealer 6. You Can't Do It Right 7. Highball Shooter 8. Gypsy 9. Soldier of Fortune 確かシンコーミュージック社刊の本だったと思いますが、 DEEP PURPLEを紹介した本の中で書いてあったエピソードで、 このアルバムでボーカルのDavid Coverdaleと ベースのGlenn HughesがBlackやFunkなテイストを強く打ち出して いったことで、ギターのRitchie Blackmoreが嫌気を指していった、 なんて話があったかと思います。 そんな雰囲気が垣間見えるのは、2曲目だったり4曲目だったり、 確かにそれまでのDEEP PURPLEの陽気な何も考えてないロック、 という感じが薄れてきているなあ、という感じのアルバムでございます。 とはいえ。一枚の作品として何の先入観もなく聞いてみると、 全体的にまとまっているアルバムだなあ、という印象はあるのではと。 そして、個人的に申し上げるのならば。 高校を卒業した後に、母校の文化祭ライブでむっちゃ演奏のうまい 先生(ドラムとギターとキーボード)たちと一緒に組んだバンドで、 1曲目と5曲目をコピーしたことがありまして。 これはギター、ドラム、キーボードの奏者がある程度高いレベルの 技術を持っていないときっちりとコピーできない曲なんですね。 このむちゃくちゃうまい演奏をバックに、 私はボーカルとしてDavid Coverdaleになりきったわけでございます。 ぶっちゃけ、演奏したのが90年頃の話でしたから、 この2つの曲を知っている世代が観客としていた高校生たちに いるとは思えないわけでございます。 文化祭ですから、知り合いが出ているバンドでもない限...

小説「味噌汁の味」(19)

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( 18 に戻る) 「そういえばさ、俺、じいちゃんとばあちゃんに会うの、初めてだよ」浩輔が言う。「だいたい今までさ、じいちゃんとばあちゃんの話するのって、なんかタブーみたいになってたじゃん」  確かに、浩輔の言う通りだった。俺たちのことは、未だに俺の両親は認めていない。子どもたちにはずっと、俺の両親はもうすでにこの世にいない、と言い続けていた。祖父母がまだ存命だということを彼らに打ち明けたのは、浩輔が高校生、恵美子が中学生になってからの話だった。 「まあ、な」あまりにはっきりと浩輔に言われて、俺はなんだかばつが悪い。 「失礼な言い方、しないでちょうだいよ」聡美は浩輔を諭すように言う。 「そうよ、お兄ちゃんはいつも一言多いんだから」 「うるせえなあ、わかってるよ」  俺のオヤジとオフクロが住むのは、名古屋駅から名鉄線に乗り換えて、特急で15分ほどのところである。新幹線での乗車時間を合わせても、2時間に満たない。それなのに、ここまでの道のりは遠かった。  今でも、遠く感じていることには違いない。出かける前に、電話を一本入れておいた。オヤジは俺の言葉に、一言も返してはこなかった。それが何を意味しているかは、わからない。だから、行ってみるだけだ。 「なあ、オヤジ」名鉄線の特急電車の中、浩輔は俺に声をかける。「ほんとは怖いんじゃないの」 「何が」 「じいちゃんとばあちゃんに、会うの」 「……ああ、怖いよ」俺は正直に答える。「でも、大丈夫だ」 「ほんとに?」 「ああ。一人じゃないからな」  この年になって、自分の親に会うのを恐れているなんて、かっこ悪いと思う。親はいつになっても親だ。だけど、いくら両親が反対していたと言っても、聡美がいて、浩輔がいて、恵美子がいることは、もう誰も否定できない事実だ。家族がいることが、こんなに頼もしいと思ったのは、初めてかもしれない。  電車が、目的の駅に到着する。数十年ぶりに訪ねた駅の周辺は、当時の面影はほとんどない。俺は、大きく深呼吸をする。タクシーに乗って5分もすれば、俺の実家だ。( 20 へ続く) 人気blogランキングへ  ← ワンクリックお願いします。  ← こちらもぜひ。

小説「味噌汁の味」(18)

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( 17 へ続く) 「ほら、もうすぐ着くわよ。早く準備しちゃいなさい」聡美は今までの話をなかったものにするかのように、母親ぶりを発揮する。 「えー、そんなー。いいとこだったのにぃ」恵美子は本当に残念そうだ。  いつものように一人で出張している場合は、車内アナウンスが聞こえてからでもしばらくタバコをふかしていたりする。アナウンスから10分近くは、到着までに猶予があることがわかっているからだ。しかし家族連れというのは、何だかんだと準備に時間がかかる。なるほど、だから到着のかなり前にアナウンスを入れるんだな、と改めて実感する。  名古屋駅に降り立つ。本当に久しぶりだ。息子と娘にとっては、初めての名古屋じゃないだろうか。 「どうだ、名古屋だぞ」俺は子どもたちに、誇らしげに言う。 「なんかちっちぇえ駅だな」浩輔はいきなり俺の気持ちを逆なでする。 「何言ってるんだ。これでもずいぶんきれいに、大きくなったんだぞ」 「そうですよね。昔はこんなにきれいじゃなかったですもんね」聡美は懐かしそうに辺りを眺め回している。 「おまえたち、名古屋は初めてだろ」 「そうだね」恵美子も珍しそうにきょろきょろしながら答える。「初めてじゃないかな」 「何言ってるの。あんたたちが小さい頃、そうだ、浩輔がまだ幼稚園ぐらいの頃だったかな。一回来てるわよ」大きなため息をついて、聡美は続ける。「まあ物心ついてない頃だから、覚えてないだろうけどね」 「あれ、そうだったったか。一回連れてきてたかな」 「そうですよ。あなたまで忘れたんですか」  そうだった。俺の両親に家族を会わせようと思って、家族みんなで来たことがあったのだ。その時オヤジは、聡美に会いたくないと頑なに会うのを拒否したんだった。嫁入り道具の一つも持たせてこない家の娘に、会うつもりなどない、と言っていたっけ。 「お父様、お元気ですかね」 「ああ、元気だと思うよ。今度は会ってくれるんじゃないか」 「そうですね。もう二十年以上も経ってますからね」聡美の顔は、少し寂しそうだった。( 19 に続く) 人気blogランキングへ  ← ワンクリックお願いします。  ← こちらもぜひ。

【私の音楽ライブラリー/第四回】DEEP PURPLE/BURN(紫の炎)

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ゆでたまごのすけでございます。 ここまでDEEP PURPLEを続けたら、 しばらくはDEEP PURPLEでいこう、 なんて思っちゃった次第でございます。 そんなわけで、第三期の代表作「BURN」でございます。 王様の直訳だと「燃えろ」なわけですが、 邦題は「紫の炎」となっているわけでございます。 当時、70年代の洋楽の邦題って、どれもなんか変、 という感じがするのでございますが、 こちらも直訳ではないとはいえ、 アルバムのジャケットを見ると「まあ、そうか」と、 変に納得してしまうわけでございます。 第三期DEEP PURPLEというのは、 第二期からまたボーカルとベースが入れ替わり、 David Coverdale(Vo.) Ritchie Blackmore(G.) Glenn Hughes(B.&Vo.) Jon Lord(Key.) Ian Paice(Dr.) というメンバー構成になったわけでございます。 David Coverdaleは、ご存知の方も多いでしょうが、 その後Whitesnakeというバンドでブレイクしたボーカリスト。 そしてGlenn Hughesはベースとボーカルを両方こなせるということで、 DEEP PURPLEとしては初めてツインボーカル、なんてものを実現した、 というのが特筆すべきところかなあ、と思います。 1.Burn 2.Might Just Take Your Life 3.Lay Down,Stay Down 4.Sale Away 5.You Fool No One 6.What's Goin' On Here 7.Mistreated 8.'A'200 まあもちろん有名なのは1曲目でしょう。 ギターリフというか、メインフレーズはよくテレビ番組のSEとかでも 使われていますし、途中のギターソロ、キーボードソロは、 RitchieとJonの持ち味を存分に出したものと言えるでしょう。 私の個人的な思い出としては、 Burnを試しにコピーして、遊びで「俺がドラムやるー」とか言って、 やってみたら一曲で死にそうになった、ということでしょうか。 あんなにドラムソロのようなフレーズが続く曲は、 ドラム泣かせと言って過言ではないでしょう。 そして何と言っても、7曲目。 その後、CoverdaleのWh...