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【読書ノート】アホの壁/筒井康隆

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ゆでたまごのすけでございます。 私が勝手に師と仰ぐ天才作家、筒井康隆氏。 その完全に二匹目のどじょうを狙ったとしか思えないタイトルで、 実際に「そうだ」と本書内で書いているところが、 なんとも筒井氏らしくて好感が持てる一冊が、 こちらの「アホの壁」でございます。 ところどころに、かつて筒井氏が書いた作品にも登場するような、 アホなエピソードが交えられたりしながら、 結局、さんざっぱらアホと思われるような行動や言動をする 人たちのことをけちょんけちょんにしつつ、 でもやっぱりアホがいなければ世の中は成り立たない、 という結論に至るという、何とも愛すべき一冊でございます。 たぶん、筒井氏がこれまで積み重ねてきた知識や教養を、 ほんの一部使えばアホだけで一冊の本が書けてしまう、 というところを存分に見せつけた作品と言えるでしょうが、 そんなことをやってしまう俺ってアホでしょ、 と「けけけ」なんて笑い声を上げて喜び跳ねている 天才・筒井氏の姿が見えてきそうで、 ファンの私としては、痛快な一冊だったわけでございます。   

【読書ノート】あめりか物語/永井荷風

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ゆでたまごのすけでございます。 ちょうどソウルに行く前後に読んだ、 永井荷風「あめりか物語」。 前にとある取材で、荷風にゆかりのある街を取材し、 そこで見かけた荷風の資料を見て、 この人、なんてダメ男なんだろう、 と思いまして、そこにすごくシンパシーを感じ、 興味を持った作家の一人なんでございます。 確か、わりとぼんぼんに育った感じで、 親から言われて銀行員かなんかになって、 アメリカに赴任させられた時の体験をもとに書いた、 短編小説集、と言ったらいいんでしょうかね。 明治時代に書かれた作品ですが、 ところどころで時代を感じさせる記述があるものの、 なんか世界の男のダメさ加減と、 荷風であろう主人公のダメさ加減が、 とにかく時代を超越したものであることを強く感じつつ、 ああ、ダメでもいーじゃん、と勇気をくれる一作、 と言ってしまうとまるでほめてないように思えるかもしれませんが、 私としては最大限の賛辞を送っておるつもりなのでございます。 所詮ね、いつの時代も男はバカな遊びに興じ、 アホな夢を追いかける生き物なんでございます。 きっとこれは、異性には決してわからぬものなのだろう、 と思いながら読破した次第でございます。   

【読書ノート】告白/湊かなえ

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ゆでたまごのすけでございます。 今さらですが、湊かなえ作・告白、読了。 確かに、これはヒットするわなあ、というのが、 率直な感想でございます。 各章で告白する人物たちがすべて、 ほんとイラッとするほど自分本位。 ネットで検索しておりましたら、 伊集院光さんが同名作品の映画をDVDで見て、 「久しぶりに嫌いになる映画を見た」とか、 「登場人物の全てに腹が立つ」といった評を、 ラジオ番組でされていたという記述がございました。 その気持ち、よくわかるなあ、という感じでございます。 しかしながら。 それだけ自分本位な人物ばかりが登場する作品が、 どうしてこうも支持を受けたのか。 それは、それだけ読んだ人たちが共感したから、 ということだろうと思うわけでございまして、 自分の中にある自分本位な部分に共鳴した、 ということではないかと思うのでございます。 かく言う私も、彼ら登場人物の気持ちはよくわかる、 なんて思ってしまったわけでございます。 しかしながら。 一方でこれだけ自分本位な人たちばかりを、 これほどまでに思い切り描き切った作品というのも、 これまでになかったのではないかと思うのでございます。 伊集院さんもおっしゃるように、 誰一人、まともないいヤツというのが出てこない。 世の中の多くの人たちは、 ドラマでも映画でも、どんな形であれ、創作物に対しては、 勧善懲悪というようなわかりやすい形で、 救いのある物語を求めるものであると思います。 そんな都合よく、問題が解決するようなことは、 実際にはありはしない、とわかっていたとしても、 そうあってほしいという願望とか、夢のようなものを、 創作物の中に求めるわけでございます。 もちろん、そういう救いのあるドラマもあっていい。 しかし、こういうまるで救いのないドラマもあっていいし、 おそらくは、そんなドラマがなかったからこそ、 この「告白」という作品は大いに支持を集めたのではないか、 と思うわけでございます。 湊さん、他の作品はどんなものをお書きなのでしょう。 少々、興味がわいた次第でございます。   

【読書ノート】ここを出ろ、そして生きろ/松原耕二

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ゆでたまごのすけでございます。 久々に読んだ小説でございます。 著者の松原耕二さんという方は、 ニュース23のキャスターの方でございます。 筑紫さんの頃にはディレクターをやっていたり、 ニュースの森のキャスターをやっていたり、 というご経歴の方でございます。 ゆえにでしょうか、 舞台はコソボとかコンゴとか、 紛争地域になっておりまして、 そこをめぐるNPOの人たちや、 国連の人たちの姿が描かれていたり、 たとえば国連から物資が届いても、 その用途に応じた使い道でないと、 いちいち申請を出さないといけない、 といった無駄とも思えるルールがあるなど、 そこで展開されるジレンマのようなものが、 とてもリアルに描かれているのでございます。 骨格としては、恋愛小説なんでございます。 その恋愛を紡ぐ男女が、 それぞれ紛争地域に援助をしに訪れている人たち、 というのが新しいのでございます。 こういうリアリティのある小説というのが、 これからもっと増えてくるといいのにな、 なんて思ったりする次第でございます。 その筆者だからこそ描ける世界観、 というのがある作品というのは、 読んでいてとても好感度が高いのでございます。   

【読書ノート】書きあぐねている人のための小説入門/保坂和志

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ゆでたまごのすけでございます。 もう、私の長年の思いに、 応えてくれるかのような、 そんなタイトルに引かれて、 つい買ってしまった一冊でございます。 保坂和志さんという作家のことを、 この本を読むまで全く知らず。 ただ、ひたすらに、 この本を読んだことで、 なんか私が今までなぜ作品を書こう、 と思い切れなかったのか、 が全部わかった、みたいな気にさせられました。 この本で、保坂さんがおっしゃってること。 つまりは、既製の枠にこだわるな、ということ。 すごく、大雑把な捉え方ではございますが。 小説はかくあるべき、みたいな発想は、 しなくていいんだと。 私的に言うなら、売れるためにどうするか、 的な手法論ばかりを追い求めていても、 結局作品なんて書けやしないぞ、と。 そうなんだよ、そうなんだよ。 好き勝手、書きゃいいんだよ。 なんか、うなずかせられることばかりでございました。 これまで、誰かの目とか、読み手のこととか、 必要以上に意識し過ぎてしまっているから、 書きあぐねていたわけでございます。 スゴい、スッキリいたしました。 てなわけで、ちょっとずつ、書き始めております。 時間をかけてでも、書きたいもの、 書いてやろうとモチベーションが高まっています。 いやあ、ありがとう、保坂さん。 目からウロコが落ちるとは、このことだ、 と思わされた一冊でございました。   

【読書ノート】sex/石田衣良

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ゆでたまごのすけでございます。 引き続き、読書ノートでございます。 こちらも、初でございます。 初・石田衣良。 でも、初がこの一冊でよかったのか、 という感じはどうしてもいたしますが。 図書館に、これしかなかったんだもん(笑)。 いろんなジャンルにわたって、 作品を発表されておられるようでございますね、 石田衣良さん。その中でも、 ちょっと特殊なジャンルと言えばそうだろうな、 という感じでございます。 セックスを軸にした物語を、 短編でいくつも紡いだ感じの一冊でございます。 確かに、下手なエロ小説を読むよりも、 遥かに官能的だなあ、と関心させられた、 という次第でございます。 あとがきでも書かれていた通り、 セックスというのは実は、 とても人間の根源にあるもので、 それをしっかりと見据えて小説を書く、 ということは意外とされてこなかったのではないか、 と思うのでございます。 なので、この一冊は、 小説家・石田衣良の実験の一つ、 ということになるのでございましょう。 さらっと読めました。 もちろん、官能的でございますので、 コーフンもいたしました。 こういうアプローチがあってもいいな、 と思わせられた作品でございました。   

【読書ノート】模倣犯(下)/宮部みゆき

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ゆでたまごのすけでございます。 初・宮部みゆき、読了でございます。 模倣犯の下巻でございます。 一部で事件の被害者側からの視点、 二部で事件の加害者側からの視点、 という形で描かれて、 共犯の片割れが生き残って、 その片割れが自分の所業はさておき、 もう片方の片割れとともに死んだ、 共犯二人の高校時代の友人は犯人ではない、 という論を世の中に放ち、 一躍時の人としてマスコミに注目される、 という展開をする第三部が主体となった 一冊でございました。 物語の構成力も、よくぞまあここまで、 緻密に設計して書きなさるなあ、 と関心しきりでございました。 また犯人はこいつ、というのを先に読者に知らせておき、 いつになったら事実がわかるんだ、 と引っぱり倒すという手法もスゴいなあ、 と思わせられた次第でございます。 自分が犯人でありながら、 しれっとして自分は犯人に仕立て上げられた かわいそうな友人を救おうとしているのだ、 という体でもてはやされるペテン師がペテン師であることを、 一体どうやって暴くんだ、という風に思っていたら、 まあものの見事に前段で登場していた登場人物を絡ませ、 事件を起こしていくプロセスで描いていたペテン師の 心理状態の変化にも絡ませて、説得力のある形で、 暴いてしまうというその展開力も、ほほう、 とため息をついた次第でございます。 いずれにしても、東野圭吾さんを読ませていただいた時にも 思った次第でございますが、昨今の流行小説というのは、 緻密な設計のもとにつくられたものでないと、 なかなか流行はしないのだろうなあ、と思った次第でございます。 勉強になりました。はい。   

【読書ノート】模倣犯(上)/宮部みゆき

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ゆでたまごのすけでございます。 初、宮部みゆきでございます。 それが「模倣犯」でいいのか、 というのは、 よくわかりませんが(笑)。 長い長い、物語でございますね。 伊坂さん、東野さんとともに、 ミステリー出身の作家さんは、 物語の構成力とか、伏線の張り方とか、 きめ細かにつくり込んでいくのだなあ、 と改めて思う次第でございます。 物語は、歪んだ少年期を過ごした栗橋と、 彼が少年期に憧れてやまなかった 「ピース」と呼ばれる友人とが引き起こす、 世の中を震撼させた連続殺人事件が軸。 その事件を追うルポライターの女性や、 彼らの事件が発覚したゴミ箱に捨てられた 腕を見つけてしまう第一発見者の少年、 それに栗橋とピースと同じ少年期を過ごし、 鈍重で優しいと言われてきた高井という男性、 などなどが絡んでいき、それぞれの家族や、 そのまわりを取り巻く人たちとの関係性を、 一つひとつ丁寧に描いていっている作品でございます。 読んでいて、感じたのは、 犯人たちに気持ちを重ねる自分でございました。 彼らの行動は、とても自分勝手で、 自分本位に物事を解釈し、だから殺人を起こしてしまう。 ある種、秋葉原のあの事件を起こした犯人の心境と、 重なる部分も大いにあるのだろうな、と思います。 おそらく、親からの愛情を歪んで受けた人たちは、 自分本位に、愛されているのに、自分はなぜ愛されないのだ、 という思いを抱きながら、生きているものなのだろう、 とつくづく思うわけでございます。 そういう人たちの気持ちを、ちゃんと描いている作品がある、 ということを知ったことが、私としては大きな収穫だったかな、 という感じでございます。 上巻では、ピースの出自があまり描かれておりません。 下巻に、そこらへんが描かれていくのだろうな、と思います。 途中、読み進めながら、先に被害者側から見た事件を描き、 その後に犯人側から見た事件を描くという手法を取ることで、 くそ、こいつは今、こういうことを思っているのに、 なんでこいつは気づかないんだ、みたいな、 「志村、後ろ、後ろ!」的な気持ちにさせられるのは、 宮部さんの作戦なんだろうなあ、などと思いながら、 なかなか先へ話が進まないイライラ感を抱かせられるところがあって、...

【読書ノート】考える力を伸ばす教科書/岸本光永・渡辺三枝子

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ゆでたまごのすけでございます。 日経新聞の書評に載っていて、 なんか興味深いなあ、と思って、 アマゾンで購入しておいた一冊、 という感じでございます。 どんな書評の内容に反応したかは、 私の記憶も定かでは ございませんけれども(苦笑)。 リーダーが不在と言われていたり、 考える力のない若い人たちが 新たに社会に出てきている、 などと言われてみたり、 あるいは小学生の学力が落ちている、 などと言われてみたり、 といった問題の根底にあるのは、 クリティカル・シンキングができなかったり、 ダイアローグ(対話と訳されますが、 この本では単に日本語の「対話」とは 意味合いが異なる、と解説されてますが)が できなかったり、という問題だ、 というのが大きく言えばこの本の主題でございます。 前段は、クリティカル・シンキングとは、 ダイアローグとは何かといった言葉の持つ意味合いを、 読んだ人たちができるだけ筆者が意図する意味と 異なることのないように解説している内容になっています。 それを踏まえて後段では、実際にどんな手法によって、 クリティカル・シンキングやダイアローグができるように していくか、という具体的な話まで網羅されています。 すべてを読み終えて感じるのは、 教育にして、企業活動にしても、 哲学というものが今は軽んじられているんだな、 という実感でありました。 たとえば「ゆとり教育」なんて言われていたものも、 本来であれば子どもたちに自主的にものを考えられるように、 知識の詰め込みだけではない教育を施していきましょう、 という哲学がベースにあったにも関わらず、 その部分を軽んじてしまって、 結局は成績至上主義という見た目にわかりやすい 数値で子どもの能力を計る、という発想を変えずにきてしまったから、 失敗に終わってしまったのではないかと思うわけでございます。 つまりは、先生たちがもっと子どもたちに考えさせることが 大事なんだ、という哲学を持って学校教育に取り組んでいれば、 もっとうまくいったんじゃないの、と思うわけでございます。 まあ、先生たちからすれば、文科省や教育委員会というお上がいて、 彼ら自身が哲学を持っていなかったから、やりようがなかった、 という言い訳をされるの...

【読書ノート】夜明けの街で/東野圭吾

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ゆでたまごのすけでございます。 初・東野圭吾さんでございます。 今さらでございますが(笑)。 とある人から、 「これ、面白いよ」と言われ、 借りてからずいぶんと間がたち、 ようやっと読了、 という感じになった次第でございます。 要するに、不倫の話でございます。 そして、それがミステリー出身の東野さんらしく、 事件と絡めたストーリーに仕立ててある。 おそらくは、東野さんとしては、 実験がしたかったということと、 サザンの「Love Affair〜秘密のデート」を モチーフにした作品が書きたかったのだろう、 ということで、できた作品なのだろうな、 と考えながら読み進めていった次第でございます。 貸してくれたのは女性だったのですが、 男性からの視点で言うと、 いやはや、よくわかりますわ、 という感じの心理描写があちこちにあり。 それと同時に、 情景の描写がなるほど、お上手なのね、 と関心するところが多々あったのでございます。 ずいぶんと、上から目線でございますが(苦笑)。 まるで、ドラマを見ているかのよう、 という感じの匂いのする作家さんだなあ、 というのが率直な感想でございます。 映像が思い浮かぶというか、 奥深いところを読み込もうとするよりも、 その頭に浮かぶ映像の流れのままに、 あっという間に読み進められるのでございます。 ただ、個人的には、 テクニカルな部分ばかりが目に止まり、 その作品世界へ没入する、 というような感じにはなれないなあと。 そういう読み方をしなければいいのでございましょうが、 きっと今の読者になる方々というのは、 そこまで没入している時間もヒマもない、 ということでヒットするのかもしれないな、 などと臆測をしておった次第でございます。   

【読書ノート】KAGEROU/齋藤智裕

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ゆでたまごのすけでございます。 一気に読めてしまいました。 水嶋ヒロこと、齋藤智裕さんの、 大ヒット作・KAGEROU でございます。今さらですが。 まあまあまあ、 いろんなことを言う人がいると 思うのでございます。 ゴーストなんじゃないか、なんて、 私も思ったりするわけでございます。 賞を取ったのも、デキレースでは? プロデューサーが誰で、 どうやって売り込もうとしてるんだ? なんてうがった見方をしてしまいますが。 読んでみての感想。 何と言いますか、ストレート? 先ほどアップしました永井荷風さんと、 比較するのもおかしいのかもしれませんが、 比較しますと、行間がない? セカチューが好きな人には、ハマるのかも? いろんなことを斜に構えて言ってしまいそうでございますが、 どっちにしても、読み終わる直前に私は不覚にも、 うるっときてしまった次第でございます(苦笑)。 ええ、ベタなもの、大好きなんでございます。 わかりやすいもの、つい目がいってしまうのでございます。 自殺しようとしたおっさんが私と同い年の41歳に なる人物で、その人物が全ド協なる団体の人間に ビルから飛び降りるのを止められて、 自分の体にある臓器、肉体をドナー提供する、 という契約を結ぶところから始まり、 ちょっとしたきっかけで自分の心臓を提供する相手と なった女の子と顔を合わせることになり、恋をする、 みたいな話でございます。 ベタであります。お涙ちょうだいでございます。 でもきっと、こんなストレートな思いを描いた作品、 今の若い人たちにはとても受けがいいのでございましょう。 それが果たして、いいことかどうかは、よくわかりません。 常に物事を斜に構えて見る傾向のある私としては、 んなわけあるか、という突っ込みを入れたくなってしまいますが、 どこか自分の心の底で、そんなピュアな世界を望んでいる部分が、 あるのも間違いない事実なんでございます。 作品としては、ありなんでございましょう。 売れたわけでございますし。 ただ、売れることがすべて正義、 という価値観はそろそろ世の中的にも、 おかしいってことになってきている気がいたします。 個人的には、もう一つ深さがほしかった、 というのが正直な感...

【読書ノート】濹東綺譚/永井荷風

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ゆでたまごのすけでございます。 ちょっと前から気になっておりました、 永井荷風さん。 ようやっと、読むことができました。 以前、本八幡の街を取材していて、 永井荷風さんに縁のあるそば屋さんを 取材する機会がございました。 その時にもらった資料の中で、 荷風さんの足跡などを見ていますと、 何ともシンパシーを感じさせてくれる 人だなあ、と印象に残ったので ございます。 今風に言うなら、ダメな人でございます。 今風でもないですね(笑)。 何度も結婚と離婚を繰り返し、 それでいて花柳界に足を突っ込み、 遊女や芸者との浮き名を轟かせる。 巻末の略歴と解説を拝見しますと、 女性不信に陥って最期は独居で迎えた、 というのも、お気持ちお察しします、 という感じですし、 ずっと女性という存在に夢を描いていたのだろうなあ、 などと共感してしまうわけでございます。 主人公の作家が、自作の小説を書くために、 隅田川の東側にある「濹東」なる地域へ 足を運び、遊女お雪と出会い、別れるまでを 描いた作品でございます。 一言で説明するなら、それだけの作品でございます。 ただただ、素性もわからぬ女に対して思いを寄せ、 素性もわからぬままに出会い、別れる。 ただそれだけの話。 それを「綺譚」と銘打つあたりが、 さすがというところではございます。 時代背景が、日華事変の前夜ということもあり、 この作品がそんな時代の中で新聞に連載され、 好評を得たというのも、なんかわかる気がします。 ただそれだけの話なのに、 なぜそこまで好評を得たのかと思うに、 ここに描かれる東京の下町の街並みと空気感。 季節の移ろいに伴って描かれる花の描写。 蚊が飛んだり、お雪の髷の種類が変わったり、 そんな描写の背景に、主人公やお雪の心持ちが、 こんな風に変化していったんだ、 というのを裏読みさせようとする、 ともすれば小津安二郎監督の映画の世界のような、 行間の豊かな表現が、読む人の心をつかむのでございましょう。 小説とは、こういうもの。 描写とは、こうあるべき。 そんな啓示を、与えてくれるような作品でございました。 先日読了しました「苦役列車」の西村賢太さんと、 どこか相通ずるものを感じるとともに、 それは私...

【読書ノート】日本人のためのフェイスブック入門/松宮義仁著

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ゆでたまごのすけでございます。 今、話題のフェイスブックでございます。 その入門書と題した一冊、 あっという間に読めてしまったのでございます。 「いいね!」ボタンがスゴいというのと、 実名登録が原則であることが新しいビジネスへの つながりを感じるということと、 要はここのところでフェイスブックを使っていると、 感じつつあるものを再確認できた一冊、 とでもいいましょうか。 著者の松宮さんという方は、 そもそも人材派遣業界などにもいらした方で、 ツイッターやブログ、ミクシィなどを使って インターネットマーケティングをされてこられた方、 ということでございます。 フェイスブックに触れてみて、 このツールの可能性はスゴい、と感じられたとか。 実際にインターネットを使ったマーケティングで、 コンサルティングの実績を持った方がおっしゃることは、 とても説得力があるわけでございます。 1刷が、1月15日。2刷が、1月24日。 どんだけ売れてるんだ、この本、 とか思ってしまうわけでございますが、 まだ今年の始まりの段階に出た一冊でありまして、 ゆえに成功事例のようなものはさほど、 掲載されていないわけでございます。 そりゃそうだよな、と思うわけでございます。 松宮さんもこの中で触れておられますが、 要はまだ成功事例を示すほどのものが世の中的になく、 つまりやったもん勝ちな余地が存分に残されている、 ということでもあるわけでございます。 とりあえず、フェイスブックをやってみよう、 と思う人たちにとっては、とてもやさしい解説書になっている、 と感じた次第でございます。 おそらく、これから「フェイスブックで儲ける法」的な、 怪しげな本がいっぱい出てくるんだろうな、 という予測をさせてくれるような一冊でございました。   

【読書ノート】デフレの正体/藻谷浩介

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ゆでたまごのすけでございます。 やっとこさ、本を一冊読み終わりました。 ベストセラーになっておる、 「デフレの正体」でございます。 ご覧のように、池上彰さんも絶賛、 という帯がついておるわけでございます。 確かにおっしゃる通り、実にわかりやすい。 サブタイトルに「経済は『人口の波』で動く」と ございますが、まさに本書はそれが 考え方のベースになっておりまして。 もうざっくり言ってしまうと、 要はじじいばばあが増え続けて、 金を使わずにいるから消費が停滞していて、 若者たちは人数が減り続けているにも関わらず、 消費が停滞するから給料も安く叩かれて、 消費ができない、だからさらに停滞する、 それゆえにデフレなんだ、という話でございます。 だから、GDPの成長率がどうのこうのとか、 そういう基準で一喜一憂するんじゃなくて、 じじいばばあにお金を使わせてあげるような施策を取って、 若者たちへの所得移転しないと日本はダメになるよ、 的な話をされているわけでございます。 もう、ひたすらごもっとも、と思うわけでございます。 まあじじいばばあと一つにまとめてしまいますと、 年金生活でギリギリな方々もおられるわけでございまして、 そういう方々に消費をしなさい、と言っているわけではなく、 要は金持ちじじばばにちゃんと使わせてあげましょう、 という話になっているわけでございます。 わからなくはありません。 私の母親も、お金を使わず年金を貯めて、 一生懸命貯金をしてきた人でしたから。 そして、お金の苦労をしてきた人ですから。 そういう意味では、私の母親のような人たちが、 金持ちじじばばの中にも大勢いるのかもしれない、 というのもうなずけるわけでございます。 しかしながら、子どもや孫の世代が、 今はよくても今後、貧困に直面するとなったら、 心配になるんじゃございませんでしょうかね。 だから、彼ら彼女らのために、使ってやる。 そう考えてもらえたらいいのでは、と思うのでございます。 金持ちじじばばが貯め込んでる個人資産って、 何百兆円という単位だという話でございます。 その1%でも消費に回ったら、 数兆円の消費が発生するわけでございます。 そう考えれば、ちょっとぐらい使ってもいいんじゃな...

【読書ノート】竜馬がゆく(二)/司馬遼太郎

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ゆでたまごのすけでございます。 竜馬がゆく(二)、読了です。 やはり、読んでいる間はどうにも、 竜馬が福山雅治さんになっているし、 武市半平太は大森南朋さんに なってしまっているんでございます。 ちょうど、龍馬伝も吉田東洋の暗殺、 という場面になっておりましたが、 まさにこの巻、そのあたりのくだり、 ということになっておるのでございます。 竜馬が千葉道場で北辰一刀流の 免許皆伝を取得してから、 土佐脱藩に至るまでのくだりでございます。 龍馬伝では、武市半平太がずいぶんと、 吉田東洋に足蹴にされたりするほど、 攘夷に取り憑かれてしまったような 頭が固い男、という描かれ方をしておりますが、 こちらではそこまでガチガチ、というわけでなく、 吉田東洋暗殺に暗躍する存在であり、 その後に藩政を裏で主導するために 隠居させられてた年寄りどもを祭り上げる、 みたいな感じで描かれておりまして。 ほほう、こういう見方もあるのね、 と司馬氏の描き方に愛を感じたわけでございます。 竜馬はやはり、土佐に収まるような器ではなく、 藩だの幕府だの、そんな枠組みなんざどうでもえい、 というスタンスで脱藩に至るのは、 龍馬伝と相通ずるものがあるのでございます。 しかし、不況期に竜馬が流行る、 という話はよく聞きますが。 確かに閉塞感を打破するために、 既製の枠組みにとらわれないで、 こっちの方がいいでしょ、普通に考えれば、 と歩みを進めていく竜馬の姿は、 まさに不況に見舞われている中では、 輝きを感じさせてくれるのだろうなあ、 と思わずにはいられないのでございます。 そんな私も、不況期だから注目した、 という一人かもしれませんしね(笑)。   

【読書ノート】いま20代女性はなぜ40代男性に惹かれるのか/大屋洋子

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ゆでたまごのすけでございます。 最近の新書ってのは、 ほんとにあっという間に読めて しまう、という感じでございます。 大屋洋子著 「いま20代女性は なぜ40代男性に惹かれるのか」 でございます。 講談社+α新書でございます。 前にちょいちょい飲みに行ってた 銀座のおねえちゃんから 「読んでみるといいよ」と 勧められまして、読んだ本でございます。 著者は、電通総研の方。 さまざまなリサーチをしている中で、 健康に関する1万人調査をしてみて、 40代の男性とつきあう20代女性が多い、 という傾向を発見して、 その理由をレポートした、 みたいな一冊でございます。 まあ簡単に言いますと、 20代の男性は草食系と言われるように、 恋愛にどん欲なところはなくて、 それでいて20代女性は人生の岐路に立たされて、 ストレスフルな環境にいるから、 癒されたい、受け止められたい、と思っていて、 かたや40代男性はバブル期を経験して、 未だに恋愛をしたいと思っているパワフルな人が多くて、 それでいて仕事上でのストレスフルな毎日を過ごしていて、 癒されたい、サードプレイスを欲している、 という条件が合致して、つきあうケースが増えてるのでは、 という仮説をまとめている感じでございます。 一方で、20代男性というのは、 競争よりもあなたはあなたのままでいい、 という個性化教育を受けて来た世代であり、 女性を必要以上に女性視することなく、 同じ人間、というような視点で見る傾向があるといい、 そういう意味では、共感できる関係が築ければ、 それはそれで20代の男女がいい恋愛をできるのでは、 というような仮説もまとめておられました。 そんな内容を、著者が仕事でリサーチしたアンケートや、 実際に聞いた体験談などを交えながら、 その仮説に信ぴょう性を持たせている、 というような内容になっておるのでございます。 なんとなーく、みんなそうかなあ、 と思っていたことを、実証しようとしている、 という点で面白い試みの一冊と言えるのではないでしょうか。 ちょうど40代のすぐ手前にいる私としては、 なるほど、今の20代女性はそんなことを考えているのか、 とある種客観的に見てしまう感じで、 読み進めてみた次第でございますが。 まあいずれにしても、 お互いにプラスになる恋愛をされておられるのであれば、 それでいいのでは...

【読書ノート】竜馬がゆく(一)/司馬遼太郎

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ゆでたまごのすけでございます。 久々の読書ノートでございます。 司馬遼太郎著・竜馬がゆく(一) でございます。 はい、龍馬伝を見ているから、 読んでみようと思った次第でございます。 ミーハー、極まりない(笑)。 装丁、懐かしくはないですか。 現在、発売されている文庫本とは、 明らかに装丁が違うんでございます。 それもそのはず、 こちらは1982年5月発行の第18版。 嫁が若かりし頃に買ったものが、 ずっと私の部屋の書棚に置いてあった、 というものなのでございます。 ご存知の方もたくさんおられるでしょうが、 (一)はほんとに若かりし頃の竜馬の姿が 描かれている巻でございます。 龍馬伝でもございましたが、 江戸は千葉道場で修行を続ける竜馬の姿。 千葉道場の周作の息子や、 その妹のさな子との触れ合い。 桂小五郎との出会い。 武市半平太との関係。 それらを読んでいると、 なぜか龍馬伝の福山雅治さんであったり、 貫地谷かほりさんだったり、 渡辺いっけいさんだったり、 大森南朋さんだったりが頭の中に出てきてしまうという(笑)。 そしてそんな中で描かれる竜馬は、 やはり新しい世界への憧憬であったり、 そしてその憧憬を憧憬のままに終わらせず、 どうすれば今の事態を打開できるか、 ということに頭をぐるぐるぐるぐるとさせたり、 ということをしている人間として描かれております。 そんなぐるぐるを繰り返しながら、 成長をしていく竜馬の姿が、とても愛おしい。 そう感じさせてくれるのは、 司馬遼太郎氏の筆の妙、 ということなのでございましょう。 引き続き、続刊を読んでみたいと思います。