時代より早すぎた男・父、多賀三好(その2)



ゆでたまごのすけでございます。
時代よりも早すぎた人、
というのはいると思います。
亡くなってから評価された、
というアーティストというのは、
和洋を問わず多いのでは、と。
そんな偉大な方々と並べて
称するのはおこがましいですが、
私の父親・三好も
そんな側面のある人でした。

確か、私が小学五年生ぐらいの頃だったと思います。
当時、父親は一体何の仕事をしている人なのか
よくわかりませんでしたが、
いずれにしても転職をしたということは何となくわかりました。
それはなぜかというと、社宅と言われていたマンションを、
引っ越さなくてはいけなくなった、ということだったからです。
ということは、その社宅を持っている会社を辞めたのだろう、と。

それで、次に働き始めた会社というのが、
どうも環境関連の設備を売る会社のようだったのです。
今ならきっと、もっと注目をされた会社だったのかもしれません。
当時は1980年初頭。まだバブルもやってきていない、
高度経済成長の余韻が残っているような時代です。
環境問題の「か」の字も世の中で騒がれていない頃ですから。

そんな会社で、父親から聞かされたのは、

この液体を、どぶ川の水に垂らすと一瞬にして真水になり、
汚泥が沈殿するんだ。すごいだろ。

という話でした。
確かにすごいなあ、と思ったものです。
続けて、父親は言いました。

この液体を使った水をきれいにする設備を、
全国の浄水場に導入したらどうなると思う。
みんな、きれいな水をふだんから飲めることになるんだぞ。

おお、それはすごい、と。
でも、当時はまだ水道水が飲めやしない、
なんてこともありませんでした。
当然ながら、ミネラルウォーターなんて飲料水が、
世の中で売られていることもありませんでした。
どうやら父親は、その不思議な液体を使って、
水を濾過する設備を自治体に売り込もうとしていたようなのです。

今から考えれば、そんなもん、簡単に売れるわけないやん、
と突っ込んでいたのかもしれません。
一般企業ならともかく、自治体なんてそんな簡単に動かない。
そのもくろみは、やっぱりうまくいかなかったようで、
その後は父親もまた別の仕事に移った、という記憶があります。

でも、その後、父親が病に倒れて体が不自由になった頃、
テレビのニュース番組でその液体のことが紹介されているのを見ました。
ああ、もしかすると、父親が言っていたのはこのことか、と。
そしてもうちょっと遅くに、父親がそんな話をしていたとしたら、
もしかしたら大きな成功を手に入れられたのではないか、と。

父親は、新しいことを始めるのがとにかく好きな人であると同時に、
時代の空気とか、世の中の流れとかを読むのが下手な人でした。
そして前述の液体を、一般企業でなく自治体に売り込んで、
導入が決まったら世の中の人にためになる、とマジメに考える人でした。

そんな血が、私の中に流れているということを、
最近はよく感じます。そんな親父に、また伝えたい。

心から「ありがとう」と。

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