【読書ノート】苦役列車/西村賢太


ゆでたまごのすけでございます。

今さらですが、読みました。
芥川賞受賞作でございます。

先日、たまたまつけたテレビに、
西村さんが出演されておられ。
SMAPの稲垣吾郎さんと
女性の方との三人で話を
されておられました。

西村さんが、稲垣さんは風俗店に
行かれたことはあるんですか、
みたいな質問をされまして、
稲垣さんが、行ったことはないですが、
興味はありますよねえ、なんて、
返答をしていたのを覚えております。

そんな様子を眺めていて、
なぜだか、西村さんをぶん殴りたい、
という衝動にかられたんでございます。

いや、もちろん、
西村さんとは全然面識もありませんし、
SMAPのファンでも、稲垣さんのファンでも、
私はございませんけれども。

この作品を読み始めて、
最初のうち、やはり主人公をぶん殴りたい、と思いながら、
読み進めるのにやけに力がいるなあ、と感じておりました。
主人公の貫多という人物は、
間違いなく西村さんご自身を投影した人物。
だからでございましょう。
なぜそんなにぶん殴りたくなるのかというと、
最初は甲斐性のない主人公にイライラするから、
などと思っておった次第でございます。

つまり、上から目線で読んでおったのでございますね。

西村さんの文体は、
やけに昔の作家風な漢字を使ったりするのでございます。
おそらく、影響を受けたと思しき私小説作家の方の作風を
リスペクトしてのことなのだろう、
などとまったく西村さんに関する知識のない私は、
そんな妄想をしながら読み進めておりました。

情けない生活っぷりを続ける主人公が、
ちょっと羨むような生活をしている友人に対し、
ゲスなケンカをふっかけてみたり、
しょうもない妄想を広げてみたりする。
ええ加減にせえや、と思いながら読み続けました。

そして、芥川賞受賞作である表題作は、
ただひたすらに、主人公は救われることもなく、
大きなドラマがあるわけでもなく、抑揚もなく、
結局はしょうもない生活を続けることになる、
というところで終わるわけでございます。

なんじゃこりゃあ、と思いました。

しかしながら、もう一つ収録されておりました、
「落ちぶれて袖に涙の振りかかる」という
作品を読みましたら、この西村さんという方、
要するに文学オタクなのだ、と気づかされるのでございます。

すっごく、研究しておられる。
研究というか、好きなんでしょうね。小説が。
どんな作家がいつ、どんな作品を書き、
その作風はどんなもので、どういう評価を当時はされ、
今はどうなっているのか、ということであったり、
いわゆる文壇での人間関係や争いみたいなものも、
頭の中のデータベースにすべて蓄積されているのではないか、
と感じさせられたのでございます。

なるほど、そこがスゴいんだな、この方は。
そう思ったわけでございます。
こだわり続けると、こうなる。
私小説しか書けない、とおっしゃっていたのは、
そういうことか、と思わせられたのでございます。

ぶん殴ってやりたい、と思った理由が、わかりました。
甲斐性のない私自身を、主人公や西村さんに投影して、
そんな自分がいやで仕方がない、と感じているから、
主人公や西村さんでなく、自分自身をぶん殴りたかった、
ということなのだ、と。

上から目線でいた私は、
自分よりも恵まれた友人を見て、
羨む気持ちがありながら、
その友人を貶めるような言動や行動を取る、
主人公そのものじゃないか、と。

まあ、この作品に登場する主人公に、
そこまで自分を投影する方は少ないのかもしれませんが、
そういうことができる方であれば、
この作品、そして西村さんの作品は、
すごく共鳴するのではないか、と思うのでございます。

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